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足底腱膜炎(足底筋膜炎)の治療方法:体外衝撃波疼痛治療について

1.体外衝撃波疼痛治療とは?


 衝撃波を痛みが生じている部位に照射することにより、痛みを誘発している自由神経終末が破壊され、除痛効果が得られる治療法です。また除痛効果だけでなく、組織修復作用もあり、血管新生や腱修復反応を促進する効果があります。

   衝撃波は音速を超えて動く時に生じる圧力波のことでその最大圧力波は100Mpaとも言われています.具体的には100Mpaは1000気圧とされ水深約10000mのマリアナ海溝と同じくらいの水圧がかかり1㎝2あたり1トンの力が加わります.

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集束型体外衝撃波

DUOLITH(デュオリス) SD1

高知県内で初導入(2017/8)しました。

  物理療法でも使われている超音波も圧力波ですが,その出力は集束型衝撃波の1/1000とされます.また超音波は連続波のため出力を上げると熱を生じますが,集束型衝撃波は非連続波のため出力を上げても熱を生じないため,高エネルギーを連続で照射することが可能になり,痛みの軽減や組織の治癒を促すことができます.

体外衝撃波疼痛治療には集束型体外衝撃波と拡散型圧力波の2つの圧力波があり,川田整形外科では2017年から集束型,2021年からは拡散型を導入しています.前半は集束型体外衝撃波,後半は拡散型圧力波についてご説明します.

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拡散型圧力波

MP100(STORZ MEDICAL 社製)

高知県内で初導入(2021/8)しました。

2.集束型体外衝撃波について

 集束型体外衝撃波(FSW)は,発生した衝撃波のエネルギーを深部で集束させ,高いエネルギーを発生させることができます.出力は低~高エネルギーまで調整可能ですが,治療効果はエネルギー量が高い方が有効とされます.エネルギーの到達深度は50mm程度とされています.その中でもエネルギーが最大となる場所をアタッチメントを用いることにより変更でき,原因部位へ効率よく衝撃波を照射することが可能になります.

 集束型衝撃波では高エネルギーにより痛みを感じる細胞の破壊を行い,除痛作用が得られます.また焦点部に集束された衝撃波は周辺へ減衰しながら周囲の細胞に適度な刺激を与え,細胞は組織再生のために活性化します.これにより組織再生に関連する成長因子の産生が促進されます.更には炎症物質の抑制にも効果があり,消炎作用もあるとされています.

 特に腱障害では,繰り返しの負荷による腱の微細損傷が組織の治癒障害を妨げ,腱の内部に神経血管網が形成されます.この異常な神経血管網が痛みの原因になるとされています.またこれらの神経血管網が存在する組織では神経伝達物質が過剰に生産され正常な組織の修復を妨げていると言われています.FSWではこれらの神経血管網を破壊することで痛みの軽減を図り,神経伝達物質を減少させることで組織の修復を促すことが可能になるとされています.
 

集束型体外衝撃波の波形

集束型体外衝撃波のイメージ(クリックして再生)

2.集束型体外衝撃波の対象となる疾患

①日本国内では難治性足底腱膜炎(足底筋膜炎)に対し、保険が適応されています。

②保険適応外疾患(自由診療10割負担)の例

[足部]急性期の足底腱膜炎(足底筋膜炎)・アキレス腱炎

[膝]膝蓋腱炎 (ジャンパー膝)

[肘]上腕骨外側上顆炎・内側上顆炎(テニス肘)

[肩]石灰沈着性腱板炎・腱板炎

[骨折]偽関節・疲労骨折

[その他]早期の離断性骨軟骨炎・早期の骨壊死

 

​ 足底腱膜炎(足底筋膜炎)は踵から指先の付け根まで伸びる腱組織(足底腱膜)が反復的な微細損傷を生じた結果,炎症を起こして痛みを生じる疾患の1つです.足底腱膜は足のアーチをサポートし、加えられた圧力に対するショックアブソーバーとして機能します。

 足底腱膜炎の原因は多因性であると考えられており、生体力学の異常と治癒の遅延が原因と考えられます。足底腱膜炎の危険因子には、扁平足、ハイアーチ、アキレス腱または腓腹筋の硬さ、足部筋の硬さ、脚の左右差、肥満、ランニング、長時間の立位またはウォーキング、履き心地の悪い靴などがあるとされています.

 症状としては朝または長時間の座った状態から立ち上がった後のかかとの痛みを生じ、動き始めると症状が和らぐといった特徴があります。一方で臨床症状では歩行(ウォーキング)やランニング時に踵の痛みを生じる方も見られます.足底腱膜炎は難治性足底腱膜炎(長い期間治りにくい)になることがあるため,痛みが長引く場合には病院を受診することをおすすめします.

川田整形外科で行う足底腱膜炎(足底筋膜炎)の治療
​足底腱膜炎(足底筋膜炎)

3.治療の特徴

 

1.1回の治療時間が10~15分と短い.

2.治療期間は3回.(週1回を3回)

3.麻酔を必要とせず,治療後歩行が可能.

4.外来通院で治療ができる.

5.手術と違い傷跡が残らない.

6.副作用があまりみられない.

4.治療の副作用

 

 ESWTは副作用が少ないことがメリットの一つであり,ESWTの合併症に関する研究*では,血腫、感染および異常な筋骨格事象のような重篤な有害事象は認めなかったと報告されてます。 合併症に記載されたものとして、治療中または治療後に不快感、痛み、腫脹などを認めたとされています.*Sun J, Gao F, Wang Y, Sun W, Jiang B, Li Z. Extracorporeal shock wave therapy is effective in treating chronic plantar fasciitis: A meta-analysis of RCTs. Roever. L, ed. Medicine. 2017;96(15):e6621. doi:10.1097/MD.0000000000006621.

5.治療効果

 

 体外衝撃波による治療は,完全なる除痛を保証するものではありません.また患者様により治療効果や治癒期間が異なります.平均的治療効果は,60~80%と報告されています.また治療成功率は1年で98%(少なくとも60%以上の痛みが減少した割合)で、症状の再発率は8%であったとの報告もされています.

6.治療にかかわる費用

 

難治性足底腱膜炎の場合(保険適応)

 体外衝撃波(3回分)の負担金 

  1割負担の方 5,000円

  3割負担の方 15,000円

​ ※初診料,再診料は別途かかります.

 

他対象疾患の場合(保険外診療)

治療例と負担金

通院1回目 

 医師診察代+必要検査代+照射1回目(8,000円)

通院2,3回目 

 照射2,3回目 各8,000円

通院4回目 

 医師診察(治療効果に関する診察.今後の方針の決定)

​※保険外診療の場合,他の治療は同日にできませんのでご注意ください.

7.体外衝撃波治療の流れ

 

治療を希望の方へ

 

① 当院通院中の方

主治医へ申し出てください。

② 新たに当院へいらっしゃる方

担当医の診察を受け、治療が適応になるか診察、検査を行います。

* 照射治療の前に、診察および必要な検査を行います。

* 照射治療は予約制です。

8.治療の流れ

① 診察

 

1.まず主治医の診察で体外衝撃波治療が適応であることを確認します。

2.治療に関する説明をさせて頂き、よろしければ同意書に署名、捺印を頂きます。

3.体外衝撃波疼痛治療を実施又は予約します。

(保険外診療の場合、保険診療と同日にすると混合診療となるため即日には実施できません。)

② 体外衝撃波治療実施当日

 

1.予約当日は窓口で受付をして、担当医の診察後、カルテ持参し、2Fリハビリ室へ。

2.体外衝撃波実施前にスタッフがアンケートを実施し、うつ伏せやイスに座った状態などリラックスした姿勢で患部に機器を当てていきます。

3.およそ15分程度で照射終了となります。

※治療中は痛みを伴いますが,我慢できる範囲で出力を調整します.

4.次回の予約を行います.  

#これを週1回行い、必要に応じて3回くりかえします。

#その後は医師の指示により1か月後に治療効果について診察します。

足底筋膜炎,川田整形外科,体外衝撃波,ESWT

体外衝撃波疼痛治療(ESWT)の実際の治療効果について

川田整形外科で行わている体外衝撃波疼痛治療(ESWT)の治療効果について検証を行いました.治療効果の検証は①足底腱膜炎の治療効果,②足底腱膜炎以外の治療効果 以上の2点について行いました.

①足底腱膜炎の治療効果について

 足底腱膜炎の治療効果は1回目から3回目までの治療前後で痛みが約55~59%の改善を認めました.1回目の治療前と3回目の治療後の痛みは73%の改善を認め,改善した人の割合は94%とほとんどの治療対象者で改善を認めました.

 最終的なVASは平均13.5mmとあまり痛みを感じないレベルにまで改善しました.VASは痛みなしを0㎜,これ以上耐えられない痛みを100㎜とした場合の現在の痛みを表したものです.

 治療の改善は治療前後においてすべての回で統計学的に有意差を認めました.

②足底腱膜炎以外の治療効果について

 足底腱膜炎以外の治療効果は1回目から3回目までの治療前後で痛みが約30~40%の改善を認めました.1回目の治療前と3回目の治療後の痛みは52%の改善を認め,改善した人の割合は90%とほとんどの治療対象者で改善を認めました.

 最終的なVASは平均24.8mmとあまり痛みを感じないレベルにまで改善しました.VASは痛みなしを0㎜,これ以上耐えられない痛みを100㎜とした場合の現在の痛みを表したものです.

 治療の改善は治療前後においてすべての回で統計学的に有意差を認めました.足底腱膜炎以外の治療効果は足底腱膜炎に比べるとやや治療効果は劣りますが,VASは25mm程度にまで軽減しており,少しの痛みを感じるレベルまで減少しました.

 これらの対象にはアキレス腱炎や肩関節周囲炎,石灰沈着性腱板炎,大腿四頭筋炎,テニス肘などを含みました.

​詳細な検証結果についてはこちらをご覧ください.下のスライドはスマートホン用に縮小しています.見えにくい場合は先のリンクよりご参照ください.

石灰沈着性腱板炎に対する体外衝撃波疼痛治療(ESWT)の実際の治療効果について

石灰沈着性腱板炎は異常な石灰が肩に突如でき,痛みで肩が上がらなくなります.夜間の痛みも強く腕の置き所がない状態で苦痛を強いられることがしばしばです.通常は関節注射にて石灰部分の炎症を抑えていくのですが時間を要することもあります.当院では自由診療ではありますが石灰沈着性腱板炎の方にESWTを実施しており,短期間で効果を認めた方も存在します.下のレントゲン写真は左が受診時のレントゲンで黄色丸に石灰を認めます.その後一回ESWTを実施し,1週間後のレントゲンが右側です.きれいに石灰が消失していることがわかります.

肩の動きも受診時は痛みで全く上がらなかったのですが,1週間後には問題なく上げれるようになっていました.念のために2回目のESWTを行い治療終了になりました.この方はESWTが著効した例になります.

拡散型圧力波

拡散型圧力波治療について:Radial pressure wave therapy

​川田整形外科では2021年8月より体外衝撃波治療の一つである拡散型圧力波治療器 MP100(STORZ MEDICAL 社製)を高知県内で初めて導入いたしました.

1.はじめに

2017/8に難治性足底腱膜炎(足底筋膜炎)に対して集束型体外衝撃波治療器(DUOLITH(デュオリス) SD1)を導入し,良好な成績を収めてきました.集束型(​SD1)は治療効果が高く,また衝撃波の出力が強いため治療に関して管理制限がありました.

今回,集束型(SD1)より出力を軽減させ,リハビリテーションの中で使用できる機器として拡散型(MP100)を導入しました.これにより様々な痛みに対して手軽に体外衝撃波治療を行うことができ,疼痛の軽減を図ることが可能になりました.

またMP100は疼痛のみではなく,関節拘縮の改善にも有効とされており集束型にはないメリットとなります.

治療を試されたい方は診察時に『拡散型衝撃波を試してみたい』とお伝えください.

2.拡散型圧力波とは?

 

体外衝撃波治療は2種類の治療法があり,1つは当院でも以前から行われている集束型衝撃波(FSW:Focus shock wave)を用いた方法と,2つ目は今回導入された拡散型圧力波(RPW:Radial shock wave)になります.両治療機器ともに2021/8時点で高知県で導入しているのは当院のみになります.

 

拡散型体外衝撃波(RPW)装置は筋や腱,軟部組織に生じる膝の痛みや腰の痛み,肩・肘・足などの様々な痛みを軽減させる物理療法機器の一つです.従来の集束型体外衝撃波(FSW)と比べ衝撃波の出力が低いため,理学療法士がリハビリテーションの中で使用可能になりました.これによりさらに治療効果が高いリハビリテーションを提供することが可能になりました.

RPWは従来スポーツ現場での低侵襲治療に使われてましたが,近年,病院施設での整形外科患者に対して使われるようになってきました.

FSW:集束型衝撃波

RPW:拡散型圧力波

3.今まであった体外衝撃波治療とは何が違う?

 

 従来のFSWは衝撃波の出力が非常に高く,骨に影響を与える可能性(偽関節や難治性骨折の治療に有効)があることから医師管理のもとで実施が必要でした.一方でRPWはFSWと比較して出力が1/100と低いため骨に影響を与えることはないとされ,理学療法士がリハビリテーション内で物理療法と同じように実施が可能になりました.

 

 FSWはエネルギーを収束させるため治療範囲が狭く,問題となっている箇所へピンポイントで照射する必要がありましたが,RPWはエネルギーを拡散させるため治療範囲が広く,問題となっている箇所へ照射を行いやすいというメリットがあります.

 

 またFSWは適応が骨・腱の疾患を中心としていますが,RPWでは腱,筋と特徴が異なります.これは照射強度と照射範囲が影響しており,FSWは50mmと深層まで治療が可能で,RPWは20mmと表層の治療に向いています.RPWは表面が一番エネルギーが高く,深部にいくにつれてエネルギーが拡散し減衰するという特徴があります.一方,FSWは焦点距離を調節することで特定の場所を集中的に治療する特徴があります.


 

 RPWは照射装置についてあるトランスミッターが取り換えが可能で,交換することで疼痛治療の他に筋のリラクゼーションや拘縮治療などに対して幅広い治療が行えるようになります.

 中でも拘縮(関節が硬くなって動かなくなった状態)治療に関してはいままでの衝撃波装置(FSW)では治療効果が乏しかったため,現在有効な治療方法の一つとなっています.

集束型と拡散型の照射深度

拡散型のトランスミッター交換

左半分がFSWで深部に高出力,右半分がRPWで浅部に広範囲で出力される

筋膜リリース用のトランスミッター

水中での拡散型圧力波の見え方(クリックして再生)

4.対象疾患

 

 ※変形性膝関節症(局所痛),アキレス腱炎(アキレス腱症),足底腱膜炎(足底筋膜炎),シンスプリント,膝蓋腱炎,オスグッド病,五十肩(肩関節周囲炎),テニス肘,ゴルフ肘(上腕骨内・外側上顆炎),石灰沈着性腱板炎,腰痛,筋挫傷など

 

※変形性膝関節症などは変形を改善させる効果はありません.局所(筋・腱など)で痛みを生じている箇所での疼痛軽減に効果があります.変形を改善させるためには高位脛骨骨切り術などの手術が必要になります.

 

5.治療の特徴

 

1.1回の治療時間が約10分程度でその他のリハビリの支障になりにくい.

2.RPWと運動療法を組み合わせることで治療効果が高くなる.

3.即時的な治療後の疼痛軽減がみられる.

4.痛みの軽減だけでなく関節拘縮の改善にも効果がある.

5.筋系へのアプローチが可能

6.治療期間は週に1~2回.

7.副作用があまりみられない.

8.FSWと同様に麻酔を必要としない.

6.治療の副作用は?

 

 治療において大きな副作用はほとんどないとされますが,見られる副作用として照射痛や照射後の疼痛(鈍痛や筋肉痛),皮下出血,腫脹,発赤などが出現することがあります.


 

7.拡散型体外衝撃波治療の費用は?

 

 RPWの治療費用はリハビリテーション費用に含まれているため別途費用がかかることはありません.FSWでは足底腱膜炎では保険適用で5000~15000円/3回,それ以外の疾患は自由診療で8000円/1回となっています.

 

8.得られる治療効果は?

 

 RPW,FSWともに高い除痛効果が得られることができます.RPWは同一部位に連続照射を行うと皮下出血を生じやすく,同一部位に照射する場合はFSWが推薦されます.またFSWでの治療報告では照射強度が高いほど治療効果が高いとされます.RPWは照射強度が上がれば照射時痛がFSWより強く出現するため局限性の場合はFSWをお薦めします.

 

 RPWは除痛以外にも関節の拘縮に有効であるため,膝・肘が曲がらない,伸びないなどの症状に対して改善が期待できます.また術後の組織の癒着による可動域制限にも効果があるため,継続して行うことで可動域の改善が見込めます.

 

9.治療の流れについて

 

1.診察を行い,リハビリテーション開始の指示をもらいます.

2.リハビリテーション開始時に問診や評価から疼痛の症状を確認し,痛みを生じている問題個所を触診や動作により特定していきます.

3.低レベルの照射から治療を開始します.反応を見ながら徐々に出力を上げていきます.痛みに耐えうる出力まで上げていきます.

4.最初に圧痛を除去するトランスミッターで局所の痛みに対して治療を行い,次にその疼痛部位に関係する筋肉に対してトランスミッターに変更して筋のリラクゼーションを行います.

5.拘縮改善を目的として場合には上記に加え,癒着改善を目的としたトランスミッターに変更して治療を行います.

6.複数回の治療を必要とする場合は一定の期間の治療間隔を空けます.週1~2回の実施が目安となります.

 

RPWの治療では1回の治療ですべての痛みを除去することができない場合があります.基本的には複数回の治療を繰り返し行うことで組織の修復を行い,疼痛を軽減させていきます.

 

早期に痛みを軽減させたい場合には,出力が高いFSWの方が治療効果が見られやすいとも言われているため,必要に応じてFSWを選択した方が良い場合もあります.詳しくは診察時に主治医にご相談ください.

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